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HEART FAILURE

心不全

徳島大学大学病院 循環器内科 特任助教
門田 宗之Muneyuki KADOTA
心不全パンデミックに
チーム医療で立ち向かう
「心不全」とは,心臓の働きが徐々に低下し生命予後を縮める疾患群と定義されています。また心不全の患者数は毎年約1万人ずつ増加しており、2030年には約130万人にもなると推計されています。心不全はすべての心疾患の終末像とも言われており、治療に難渋することも多く、個々の症例に応じて病態や重症度が大きく異なるため、当院ではどのような治療が最も適しているかを検討しながら治療にあたっています。

自己紹介を交えたグループ紹介

徳島大学病院の門田宗之です。私は2010年に徳島大学を卒業し、当院を含めた徳島県内の施設研修を積み、国立循環器病研究センター心臓血管内科部門心不全科での2年間の研鑽を経て、2019年より当院での診療に従事しています。また縁あって「U40心不全ネットワーク」という若手心不全医のコミュニティでの活動にも関わらせてもらっていて、徳島県内の先生方や国立循環器病研究センター、若手コミュニティで培った人の繋がりを大切にしたいと思っています。こうした専門医療機関を含む多数の施設との連携・情報共有を通じて、全国にも引けを取らない心不全診療を展開できることが当科心不全グループの強みの一つだと感じています。

臨床面での活動

重症心不全治療

急性心筋梗塞や劇症型心筋炎で搬送される緊急の心原性ショック症例、重症慢性心不全が悪化した場合など、あらゆる内科治療(おもに薬物治療)が効果的ではない場合には「補助循環」という心臓のポンプ機能を助けるデバイスを導入します。そして破綻した心臓機能を代行し心臓を一時的に休ませ、心臓の回復を手助けします。当院では「IMPELLA」という超小型のポンプを内蔵した最新の補助循環装置を導入しており、これらを含めた非薬物治療と適切な薬物治療を行うように努めており、重症心不全患者さんが無事に社会復帰を果たせるよう全力を尽くしています。しかし残念ながら心機能の改善が望めない若年の患者さんにおいては、心移植を見据えて大阪大学や国立循環器病研究センターといった移植施設とも連携を行っております。また心臓移植後の患者さんや、植込み型補助人工心臓を挿入された患者さんも、移植施設と協力しながら当科外来で診療にあたっています。

ImpellaCP Smart assist
(画像提供:日本アビオメッド)

Impellaシェーマ

Impella制御装置

心アミロイドーシスに対する薬物治療

従来は根本的治療が皆無だったトランスサイレチン型心アミロイドーシスに対し、タファミジスという薬剤が開発され、これまでの臨床試験で心不全症状や心不全進行を抑制することが示されています。当院はタファミジスを用いたアミロイドーシス治療を実践できる徳島県内唯一の施設であり、徳島県のアミロイドーシス患者さんの症状改善・生命の延伸につなげていきたいと考えています。
https://www.tokushima-hosp.jp/advanced/tafamidis.html

心臓リハビリテーション

心臓リハビリテーション(以下、「心臓リハビリ」)は心不全の発症予防・重症化予防にとても有効とされています。当院でも心臓リハビリの充実に力を入れており、医師、看護師、理学療法士、管理栄養士、薬剤師といった多職種チームで協議を行い、早期退院の支援を行ったり、退院後も外来での心臓リハビリを継続したりといった活動を続けています。外来通院の心臓リハビリは他施設からの紹介も受け入れていますので、当院で治療を受けている患者さんでなくとも、当院の通院リハビリを受けて頂くことが可能です。また、当院は四国で唯一の心臓リハビリ研修施設に認定されており、心臓リハビリに従事する医療従事者の育成も行っています。

心不全地域連携

令和3年10月に策定された徳島県循環器病対策推進計画に基づき、徳島県内の医療機関の多職種の方々からなる「徳島心疾患地域連携ネットワーク」が設立されました。その活動において、徳島大学病院と徳島赤十字病院が中心となり、「徳島県心不全地域連携パス」が令和4年10月に作成されました。(https://www.pref.tokushima.lg.jp/ippannokata/kenko/kenko/7210428/
各々の施設ではなく、徳島県全体で心不全増悪の予防および生命の延伸を図るための連携ツールとして今後もいっそう活用されるよう、普及啓発を進めています。

研究面での活動

遠隔伴走型心臓リハビリ支援サービス「リカバル」

全国的にみても心臓リハビリを実施できる施設数は少なく、移動距離・就業等の理由で通院が難しく、退院後に心臓リハビリが受けられる患者さんは少ないのが現状です。このような状況を踏まえ、当グループでは伊勢孝之助教を中心として、ウェアラブルデバイスとアプリを用いた遠隔伴走型心臓リハビリ「リカバル」 (URL: https://recoval.jp/)による新たな在宅心リハの取り組みを行っており、心リハの認知と普及にも尽力しています。

その他の研究活動

心不全増悪のバイオマーカーの探索、心不全治療薬の多面的効果の検証、遠隔リハビリなどを臨床研究にて行っています。また全国で展開されている多施設共同研究にも多数参画しており、心不全診療の更なる発展を目指しています。

MESSAGE

若手へのメッセージ

 心不全は循環器疾患をもつ患者さんにとって必ず関係してくるものです。心不全診療を通して、複雑な循環器疾患を総合的にマネジメントする診療のバランス、また患者さんの人生そのものを一緒に歩む広い視点を身につけることができます。「治すためにどうするか」「治りきらないときにどうするか」、常に考え続けることは時に困難を伴いますが、そういった経験は必ずあなたの循環器医としての懐を深くしてくれるはずです。一緒に心不全パンデミックの時代に立ち向かっていきましょう。

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